ドッグ(ドギー)ブレスの効果・横隔膜を使ったボイトレ法とやり方

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ドッグブレスは、よく基礎練習に取り入れられる方法です。

小学校の音楽の授業でも、やった覚えがあるのではないでしょうか?

ただ、やる意味が分かっていないと、少しもったいないです。

歌を安定させる為に、必要な基礎になってきます。

今回はドッグブレスの効果や、方法を書いていきます。

ドッグブレス とは(ドギーブレス)

腹式呼吸での呼吸を、スタッカートで行う事を、ドッグブレスと呼びます。

※腹式呼吸=主に、「横隔膜」(おうかくまく)をコントロールして行う、深い呼吸の事。

※スタッカート=「短く切る」という意味の音楽用語です。

 

散歩から帰った後の、犬のお腹の動きを思い出してください。

「ハッハッ・・」と、短く鋭い呼吸をしています。

これを真似るので、ドッグブレスと呼ばれています。

なぜドッグブレス?

手っ取り早く言えば、「横隔膜」を動かしたいからです。

横隔膜は、呼吸でしか鍛える事ができません。

ドッグブレスは、横隔膜を鍛える為のトレーニングです。結果的に、腹式呼吸がしやすくなります。

 

普段、日本人は胸式呼吸という、浅い呼吸が多いです。

※胸式呼吸=肋骨(ろっこつ)等の、胸の骨格が主体となる呼吸の事です。肋骨に付いている筋肉の動きで、肺に空気が送られます。

 

なぜ日本人の呼吸が浅いのかと言うと、言語的な問題があります。

日本語はどうしても、口先だけで話せてしまう言語なのです。

その為、意識して横隔膜を使う必要があります。

 

※腹式・胸式について気になる人はこちら歌い手さん向け・腹式呼吸と胸式呼吸とは?その違いと仕組み

横隔膜と腹式呼吸

横隔膜は練習すれば、意識的に動かす事ができるようになります。

腹式呼吸は、この横隔膜を中心とした呼吸の事です。

横隔膜は、肺と内臓の間に、仕切りのように存在しています。

下記の図を見てみてください。

オレンジの部分にある筋肉が、「横隔膜」です。

周囲を腹筋・側筋・背筋等が支えています。

横隔膜は、「おわんをひっくり返した形」に例えられる事が多いです。

単体だとこんな感じ↓

横隔膜は、「横隔神経」(おうかくしんけい)によって支配されています。

脳から、「筋肉(横隔膜)に反応しなさい」と、この神経に指示を出して動いている感じです。

 

人間には、心臓や呼吸器等、「全自動」で動く器官があります。

ただ、この「横隔膜」は別です。神経を介する事で、意図的に「コントロール」が可能です。

 

腹式呼吸で使われる腹筋の力は、息を「吐く」時に発揮されます。

この時、内側の筋肉(インナーマッスル)が必要になります。

 

これは、通常の筋トレで得られるような、表面上の筋肉ではありません。

声は息によってコントロールされます。

息をコントロールする為の筋肉は、息を吐く事によって鍛える事が上達の近道です。

スタッカートで練習する利点・効果

ドッグブレスで練習する利点は多いです。

ドッグブレスは、スタッカートで練習します。

これは、横隔膜を動かすので、腹式呼吸がしやすくなります。

その他にも、色々メリットがあります。

「アタック」の練習になる

歌い初めに、声帯を締める事を、アタックと呼びます。

音楽全般に使われる用語で、「音の立ち上がり」を意味します。

「鋭い輪郭(りんかく)のある音」の、出る瞬間の事です。

 

音階練習でドッグブレスをすると、声の出だしのピッチがよくなります。

※ピッチ=音の高さ。「周波数」を指す音楽用語。

 

「音がジャストに取れるようになる。」とも言います。

音の立ち上がりが良いと、バシッと決まってかっこいいです。

歌が安定するようになる

深い呼吸ができるようになると、歌が安定するようになります。

実は、呼吸が浅い事で起こる問題は多いです。

 

・声が小さい。

・声が小刻みに震える。

・息が続かない。

・一曲歌い切るのが苦しい。

 

などなど。。

深い呼吸ができるようになると、上記の問題も解決しやすくなります。

ドッグブレスは、息を吐くトレーニングです。

歌う前に行う事で、深い呼吸がしやすくなります。

息は吐かないと、入ってきません。

吐けていると、自然に息は入ってきます。

横隔膜が動くようになってくると、一曲を歌い切るスタミナ(持久力)がつくようになります。

思考(メンタル)・集中力が安定する

思考や集中力は、実は呼吸にも影響されます。

横隔膜を使った深い呼吸は、セロトニンの分泌が促進されます。

※セロトニン=精神を安定させる働きを持つ、脳内物質。

すると、思考がポジティブになったり、集中力が高まりやすくなります。

 

練習していて、メンタルが落ちてきた事はないですか?

それか、「全然集中できない!」なんて事もあると思います。

そういった時は、呼吸が浅くなってないか、よく注意してみましょう。

 

私も集中力がなく、色々な事で気が散りやすいタイプです。

また、「何やってんだ自分?」とネガティブな気持ちになった経験も多いです。

 

ある日、「今日は全然ボロボロだな、、」と思いながら練習していたら、最後に一番上手く歌う事ができました。

その直後に、「なぜ最後に上手く歌えたのだろう?」と考えました。

すると、「最後は深い呼吸で歌えていた」という事に気付きました。

つまり、「逆にそれまでがずっと、呼吸が浅かった」という事が答えになりました。

 

ドッグブレスはインナーマッスルを使います。

なるべく深い呼吸が出来ていると、まず体が温かくなります。

そして集中力があがるので、余計な事を考えなくなります。

ネガティブな事等を自然と排除して、目の前の事だけに集中するようになります。

 

もしも、「メンタルが落ちてる」と思う事があったら、呼吸の浅さも原因の一つです。

ドッグブレスのやり方

横隔膜は、外から見る事ができません。ただ、腹部の筋肉の動きで感じる事はできます。

みぞおちから、左右に広がる肋骨(ろっこつ)の下側にぐるっと手を当ててみます。

※みぞおち=お腹の上側の中央にある、くぼみの事。ヘソ上から約5センチ位。人間の急所なので、殴ったらダメ。

 

肋骨の下側に手を当てた状態で「ハッ、ハッ」と言ってみるか、「コホン」と咳をしてみてください。

その瞬間に、横隔膜の頂上は押し上げられ、脇腹は外側に押し出されます。

すると、身体の中から指を跳ね返す感覚があります。

なんとなく、横隔膜が体内で繋がっている位置が分かるはずです。

1・背筋は伸ばして、余分な力は抜く

基礎練習は、正しい姿勢で行う事に意味があります。

猫背にならないように気をつけましょう。

背中が丸まってしまうと、胸の骨格が広がりにくく、十分な空気を吸うには不利になります。

全身の筋肉は繋がっています。姿勢が悪いままだと、筋肉の可動範囲が限られてきます。

姿勢の悪さは、必ず発声に影響します。

そして、できるだけリラックスしてください。

2・口はちょっとすぼめる

口はちょっとすぼめます。

ドッグブレスと名前はついていますが、犬の様に大きく口は開けないでください。

あくまで、横隔膜が上下するのを鍛えるだけです。

 

口周り・喉周りを犬の様にやると、無駄に力んでしまったり、喉を痛める可能性があります。

肩や喉周辺がリラックスしているかは、発声する上で大事です。

また、声帯は粘膜なので、大きく口を開けて乾燥させるのもよくないです。

口はちょっとすぼめるだけで大丈夫です。

3・息を短く吐く

次に、「フッフッフッ ・・・」と、息を短く吐いてみます。

最初はゆっくりやってみてください。

それから、みぞおちに手を当てて、その部分が動いているか意識をしましょう。

 

ドッグブレスは、息を吐く事だけを意識します。

吐いた息は自然と入ってくるだけです。

吸う事を考えると、無駄な力が入りやすいです。

吐く事だけを考えましょう。

4・「ろうそくの火」を消す様な勢いで吐く

「鋭い息が吐けている事」が大事です。

芯のある声を出す時には、鋭い息が吐けているかが関係します。

息の延長線上に、声が存在するからです。

手のひらや、指を顔の前に持ってきて、吹きかけて確認してみましょう。

目の前にろうそくがあったとして、その火を消すイメージをしてみてください。

5・「1秒」ずつ息を吐いてみる

メトロノームや、時計の秒針に合わせて、連続的にドッグブレス をしてみましょう。

「1秒」は、メトロノームで、テンポ「60」になります。

最初は30秒、つまり30回ドッグブレス を試してみましょう。

 

慣れてきたら、「60秒(1分)・1セット」でやってみましょう。

ただ、これといって秒数や、テンポに決まりはありません。

自身がやりやすいように、セットを考えて行っていいです。

ただ、1セットやったら、休憩を挟んでくださいね。

6・声をつけてみる

息だけで練習してもいいですが、声をつければ、音の立ち上がりが良くなります。

五十音の「ハ」で、同じ音で連続して発声してみましょう。

 

ちなみに、「H」(ハ行)は、声帯で息が通る時に作られる「子音」です。

これは、喉頭(こうとう)で作られる唯一の子音になります。※喉頭=気管に繋がる、空気の通り道。

「H」の発声練習は、喉頭の筋肉を鍛える効果があります。

また、音をつける事で、ピッチ感のトレーニングになります。

5・あまり頑張ってはいけない

いきなり長時間やるのはNGです。

立ちくらみする人もいるので、短い時間だけやりましょう。

最初は座ってやってOKです。疲れたら、休憩を入れてください。

筋肉は1日では作られません。数日おきでも、コツコツと積み重ねる事が大切です。

まとめ

ドッグブレスは、横隔膜を使うので、腹式呼吸に繋がります。

歌う前に練習すると、深い呼吸がしやすくなります。

「浅い呼吸」に起因する問題が、解決しやすいです。

 

ただ、いきなり頑張っても、すぐに筋肉は作られません。

数日おきでいいので、少しずつ取り入れましょう。

 

短期間に頑張って、「量を稼ごう」とすると、人は挫折しやすいです。

「どうすれば、やる気がなくても(頑張らなくても)できるようになるか?」を工夫しましょう。

生活習慣に組み込んで、「何となくルーティーン」になれば、続きやすいです。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

 

ふわはるな