リップロール

Pocket

もくじ

リップロールとは

「リップロール」とは、唇を閉じたまま息を吐き、プルプル震わせながら発声する練習法です。

リップトリル」とも言い、発声の基礎練習の1つです。

どんな時に使う?

・ウォーミングアップ

・クールダウン

ウォーミングアップ

歌う前のウォーミングアップになります。

歌の調子が悪い時は、声帯の「合わせ」がよくないか、呼吸筋が動いていない可能性があります。

 

走る前に、足のストレッチをするのと同じです。

声帯のストレッチおよび、呼吸筋のトレーニングになります。

よって、ウォーミングアップに行う人が多いです。

クールダウン

さらに、歌った後の「クールダウン」にも効果的です。

全力で走った後は、軽く走って、クールダウンをしますよね。

リップロールも同じく、喉や呼吸筋、表情筋のクールダウンになります。

効果・メリット

一定の息で吐く練習になる

リップロールを長続きさせるには、一定の息で吐き続けないといけません。

そうでないと、唇の震えは止まってしまいます。

 

息は多すぎても、少なすぎても上手くいきません。

息の量や、スピードが均一で、バランスの取れた流れが大切です。

 

息がコントロールできると、歌に余裕ができます。

リップロールは、一定の息で、安定した量を吐く練習になります。

地声と裏声を切替えやすくなる

地声と裏声の、切替がスムーズになります。

高音にいく時に、切替が上手くいかない事がありますよね?

それは、息と声帯のバランスが、不安定になりやすいからです。

 

リップロールは、一定の息を吐きながら、声を出す練習ができます。

その為、息と声のバランスを、補助する事ができます。

その状態で音の上げ下げをすると、スムーズな切替えの感覚が分かりやすいです。

 

また、リップロールは、母音が「う」の音になります。

「う」は、裏声が出しやすく、その練習にもなります。

切替えを鍛えるのに、効果的です。

声帯にかかる「息の圧力」の軽減

リップロールは、声帯の負担を軽減しやすいです。

なぜなら、声帯にかかる呼気圧(息の圧力)が、分散されるからです。

 

例えば、声帯が「第一の弁」とします。そして、息は弁を振動させます。

この場合、リップロールも、声帯と似た動きをしている事に気付きます。

つまり、「第二の弁」を、擬似的に作り出していると言えます。

 

リップロールが、呼気圧を受け止める分、声帯にかかる圧力が軽減されます。

喉締めの改善に

喉を締める癖のある人は、前述したように、声帯への負担を軽減する効果があります。

そんな方は、歌う前の基礎トレにしてみると良いでしょう。

喉締めを軽減できる可能性があります。

口周りや、喉をほぐす

口周り、喉がほぐれます。

唇の振動で、周辺の血流が良くなるからです。

歌は、リラックスが大切です。

 

口周りや、喉周りが力むと、声帯も連動して力んでしまいます。

リップロールで、ほぐしてあげましょう。

横隔膜が鍛えられる

自然と横隔膜を使った、腹式呼吸の練習に繋がります。

リップロールを続ける為には、長く息を吐けるように、呼吸を意識しますよね?

すると、だんだん横隔膜が動くようになってきます。

 

日本語って実は、話す時あまり息を使いません。

その為、呼吸が浅い人が多いです。

横隔膜が、普段あまり使えていないという事です。

 

そのままだと、歌に必要な息の圧力が生み出せず、喉に過度な負担がかかります。

横隔膜が鍛えられると、深い呼吸ができるようになり、喉にかかる負担を軽減できます。

また、深い呼吸は、自律神経が整うメリットもあります。

高い声が出やすくなる

多くの人が高音の時に、喉が締まる悩みを持ちます。

大きな要因の一つに、「肺からの息の圧力に、声帯が負ける」という事があります。

流れとしては、以下の通りです。

1、声帯を閉じる能力(喉締めとは別)が、まだ育っていない

2、自分の、今のキャパを超えた高音を出そうとする

3、息を強く吐く→声帯だけでは支えられない

4、喉周りの筋肉(本来使わない)が助けに入る→喉が締まる

という感じです。

 

例えば、呼気圧が「100」とします。

声帯の力が「70」だと、負けてしまいます。

その為、残り「30」を喉締めで補って、「100」の圧力に耐えようとします。

これが、「無駄な力み」の正体です。

 

リップロールだと、唇を閉じる事で、それが「第二の弁」になります。

声帯の力「70」、残り「30」を唇が受け止めてくれます。

それによって、喉締めを回避できると、高音発声の脱力効果があります。

音程が取りやすくなる

リップロールをすると、音程が取りやすくなります。

声帯の「開閉」を鍛えられるからです。

 

音程は、声帯の「ヒダ」の動きで作られます。

正しい音程は、それを上手にコントロールする必要があります。

声帯の開閉は、リップロールで鍛える事ができます。

 

また、骨伝導によって耳に届き、自分で判断しやすくなります。

適切な息量になりやすい

リップロールは、適切な息量になりやすいです。

唇を閉じているので、大きな声が出しにくい事で、自然な息量になりやすいです。

例えば、声が枯れたり、息が続かなかったりしますよね?

原因に、「息の吐きすぎ」があります。

 

声は、「声帯」に、吐く息がぶつかる事で生まれます。

なるべく、「ぶつかる息」を少なくしないと、ダメージを負います。

リップロールは、唇が息を受け止めるので、適切な息量になりやすいです。

「ブレスの浅さ」が実感できる

「息の浅さ」を実感しやすいです。

リップロールは、吐けてないと続きません。

5秒も続かなかった場合、息が浅いと気付くでしょう。

 

しっかり吐ければ、たくさん息が入るようになりますよ。

広い音域の発声に繋がる

広い音域の発声に繋がる、最適なトレーニングです。

リップロールは、一定に吐けているかを、目で確認できます。

 

音程を変えても、振動にムラがないように意識します。

それによって、「一定の息で、広い音域を発声する」事に繋がります。

声帯を保湿しながら発声できる

口を閉じて発声するので、声帯が乾きにくくなります。

声帯が乾くと、そこに負担がかかります。

その点、リップロールは声帯を保湿しながら、発声ができます。

共鳴する空間を認識できる

声は、体の空間で響きます。

「口腔」、「鼻腔」、「咽頭(いんとう)腔」がそうです。

リップロールをする時に、それぞれ意識すると、響かせるトレーニングになります。

 

例えば、口腔でリップロール→鼻腔→咽頭の順に、響きを確認していきます。

響きを使い分ける、良いトレーニングになります。

リップロールのやり方

軽く唇を閉じる

リラックスして、軽く唇を閉じます。

上下の歯は、軽く離れています。

力が入ってしまうと、唇が震えないので、注意してください。

少し唇を尖らせる

少し唇を、前に突き出します。

母音の「ウ」の形を、少し尖らせた感じです。

鼻から息を吸う

息を鼻から吸います。

口から吸うと、喉が乾きやすいです。

乾燥を防ぐ為に、鼻から吸う方がオススメです。

息を吐き、唇を震わせる

最後に、閉じた唇の間から、ゆっくりと息を吐き出します。

唇を「プルプル」と震わせ、音を出しながら行います。

できるだけ、振動が長続きするよう、一定の息で吐きます。

 

唇の振動が、継続してできれば、正しくリップロールができています。

最低でも10秒、慣れてきたら30秒やってみます。

震わせる事ができたら

・「うー」と発声しながら、リップロール

・メロディーを、リップロールで歌う

・息の強弱の練習

「うー」と発声しながら、リップロール

唇を震わせる事ができたら、声を「うー」と出しながら練習してみてください。

リップロールから始まるので、文字にすると、「ぷうー」という感じです。

慣れたら、音階に合わせて、リップロールをしてみます。

メロディーを、リップロールで歌う

リップロールで、歌いたい曲のメロディーを歌います。

これは、「歌う時の、身体の力加減」をつかむ為です。

 

音が高くて、喉がギュッと閉まってしまう事がありますよね?

そんな時は、リップロールで歌ってみましょう。

一定の息を吐きながら発声をするのと、口の動きが邪魔をしないので、リップロールの方が歌える事があります。

息の強弱の練習

リップロールの音を、だんだん大きくしたり、だんだん小さくしたりしてみましょう。

息の強弱で、歌に抑揚をつけるトレーニングになります。

クレッシェンド(だんだん大きく)

デクレッシェンド(だんだん小さく)

息を強くしたり、弱くしたり、練習してみましょう。

練習は「段階的」に

リップロールは順序を踏まえて、焦らずに練習してみましょう。

①・「息」で唇を振動させる

②・振動を継続させる

③・②と同時に、声に出して「プルル」

④・音程を変えながら「プルル」

⑤・楽曲の音程に合わせて「プルル

5つの段階を踏んで、1つずつやってみましょう。

基本がしっかりすると、歌が安定します。

リップロールのデメリット

なんでもそうですが、やりすぎはNGです。

リップロールは、多くの息を出し続ける必要があります。

続けようとするあまり、声帯に過度な圧力をかける可能性があります。

 

リップロールだけやっても、歌が上手くなる訳ではありません。

あくまで、ボイトレの一部です。

やりすぎないよう注意しましょう。

できない原因・コツとポイント

口角を上げる

次は、そのままの口の形で口角を上げます。

口角を上げた方が振動させやすい

難しい場合は、指を使って引き上げます。

上唇は、下唇より前に出す

上唇が、下唇よりほんの少し前に出るようにすると、リップロールがしやすいです。

逆に、下唇の方が前に出ると、やりにくさを感じるはずです。

上唇は、下唇より少し前に出るようにします。

体に力が入っている

無駄に力が入っていませんか?

硬くなっていると、振動が止まってしまいます。

特に、口周りの筋肉(表情筋)が大切です。

口周りをマッサージしたり、リラックスして練習しましょう。

息が足りない

長くできない時は、「送る息の量」が足りない事があります。

リップロールを始める前、ブレスを「ゆっくり」、「たっぷり」吸ってみてください。

ゆっくりやる事が大事です。その方が、たくさん吸えますよ。

短いリップロールを繰り返す

唇が震える感覚が分からない人は、短いリップロールができる事を目標にしましょう。

息を吐き出す瞬間の、量をアップしてみてくだい。息の勢いで、唇を弾きます。

それを繰り返し行なって、唇が震える感覚を覚えましょう。

唇の乾燥

唇が乾燥していると、息が漏れやすく、震えにくいです。

唇を舐めてみたり、リップクリームを塗ったりしましょう。

息を吐ききれていない

うまく続かない人は、息を最後まで吐ききれていない事があります。

横隔膜が動いていないと、最後まで吐ききれません。

 

息を「もう吐けない!」という所まで、しっかり吐いてみてください。

吐き切る事で、横隔膜が刺激されて、自然と多くの息が吸えます。

すると、リップロールも継続しやすいです。

息が漏れている

息が漏れてしまう場合は、唇に隙間ができている可能性があります。

その場合は、もう少し唇を閉じた方が良いです。

何度か試してみる事で、力の入れ具合が分かってきます。

噛み合わせ

上下の歯は、自然に噛み合わせた状態にします。

すると、唇の接し方も安定し、上手く震わせられます。

歯は自然に噛み合わせます。

手の補助を使う

上手くいかない時は、指で両方のほっぺを、軽く持ち上げてみてください。

その状態で、リップロールをしてみると、簡単にできます。

 

表情筋が固かったり、余計な力みがあると、上手く震えません。

それを、指で持ち上げて、助けてあげます。

このやり方なら、口周りに余計な力が入りにくく、やりやすいです。

焦って音を出さない

焦ってリップロールに、音をのせようとしない方がいいです。

リラックスできずに、力が入ってしまいます。

 

「声」の土台は「息」です。

「息」だけで震わせてから、リラックスして、次に「声」をのせていきましょう。

焦らずに、お風呂で鼻歌になる感覚で、緊張せずにやりましょう。

いきなりはできない

使っていない筋肉を、いきなり使う事はできません。

自転車に乗る練習と同じで、微妙なバランスを体で覚えていきます。

少しずつ上達するので、焦ってはいけません。

やりづらい人もいる

どうしてもやりづらい人もいます。

リップロールは、唇に一定の厚みを作る必要があります。

その為、唇が薄い人は、物理的にやりづらい事があるでしょう。

 

その場合は、無理して取り組む必要はないです。

歌が歌えればいいだけなので、リップロールができる必要はないです。

他の事で、時間を有効的に使って下さい。

「発声しながらリップロール」の方が、やりやすい

リップロールは、発声しながらの方がやりやすいです。

最初から、「息だけ」のリップロールを頑張る人がいます。

実は、そっちの方が難しいです。

 

「うー」と声を出しながら、リップロールをする方が、コツが掴みやすいです。

「息だけ」リップロールのメリット

逆に、「息だけ」のリップロールは、難しいぶん練習になります。

また、声を出せない環境でもできるメリットもあります。

声が出せない環境や、呼吸筋を鍛えたい人にはオススメです!

短くてOKなので、繰り返しやるだけ

最初から、長く震わせようと頑張る人がいます。

しかし、そういう時に限って、体に力が入るものです。

まだ筋肉の使い方が分かっていないので、最初からできなくて当たり前です。

 

震える時間は短くていいので、繰り返す事が大切です。

震えた感覚を、体に覚えさせてあげましょう

まとめ